
ぜんぜんはやくない!さいごやった!
運動会から帰ってきた子に「頑張ったね!」と言ったら、こう返された、というお父さんの記録があります。
褒めたつもりだったのに、跳ね返されてしまったんですね。
似たような話は他にもありました。
マラソン大会で最下位だった娘さんに「完走したね、頑張ったね!」と声をかけたら大泣きされて、ご褒美のケーキを出したら「1位になりたい」とさらに泣かれた、というお母さんの投稿です。
かける言葉が見つからなくて、玄関先で立ち尽くしてしまう日があります…(T_T)
でも、これは言葉選びが下手だったという話ではないんです。
言葉を探すより先に、やることの順番がある、というだけの話でした!
今回は、運動会で思うような結果が出せなかった子に、帰り道から寝るまでの間に何を言って何を言わないか、実際にあった話をもとにまとめました。
すぐ使える決め台詞を探すより、その日の子どもの様子を見るヒントとして読んでもらえたらと思います。
運動会の「頑張ったね」はなぜ届かない?
子どもはもう知っている
「頑張ったね!」が跳ね返される理由は、はっきりしています。
その子は、自分がビリだったことをもう知っているからです。
一番よく見ていたのは本人です。
抜かれた瞬間も、ゴールしたときに誰もいなかったことも、全部その目で見てきました。
そこへ「頑張ったね!」と評価を重ねると、慰められている自分に気づいてしまいます。
「頑張った」と言われるほど、じゃあ頑張ってもこれなのか、という話になってしまうんですね(°_°)
「今の君じゃダメ」に聞こえてしまう
もうひとつ、はっとする指摘がありました。
足が学年で一番遅くて縄跳びも跳べない、という小学1年生の相談に、こんな回答がついていたそうです。
褒めてもらえればそれが一番嬉しい。他のことも言われると「今の君じゃダメ」と言われているようで苦しくなる
育児相談サイトの回答より
励ますつもりで「次はここを直そう」と足すと、そこだけが残ってしまいます。
足した一言が、褒め言葉を打ち消してしまうからです。
年長さんの息子さんがリレーで1位になれなかった日、お母さんが「走り方を直せばもっと速くなる」と説明しようとして、お父さんに止められた、という話もありました。

一生懸命走ったのに、どうしてそんなひどいことを今言うんだ?
言っている中身は正しいんです。
ただ、その日に言うことではなかった、というだけでした!
運動会の帰り道で最初に言うことは?
「何位だった?」から始めない
まず、聞かないほうがいい質問があります。
「今日は何位だった?」です。
順位から入ると、そこがその日の点数だという合図になってしまいます。
保育の現場からも、この質問を繰り返すと「1番じゃない自分はダメ」という受け取り方が育ちやすいという指摘が出ていました。
では、代わりに何と言うか。
厚生労働省が家族向けに出している案内には、すぐ解決策を出さずに、まず聴くことに集中すると書かれています。
気持ちの言葉は、そのまま返していいそうです。
たとえば、こう声をかけます!
運動会の話をしていません。
これでいいんです!
帰り道の最初のひと言は、運動会に触れないほうが安全だからです。
本人が話したければ、こちらが聞かなくても話し始めます。
話したくないなら、そのまま黙っていられます。
どちらでもいい形にしておくと、子どもが自分でどちらか選べます(^^)
泣く子と黙る子で声かけは変わる?
4つのタイプで正解が変わる
ここがいちばん大事なところかもしれません。
同じ「ビリだった日」でも、子どもの出方は4通りくらいに分かれます。
- 泣いている子
気持ちがもう外に出ています。言葉より先に、そばにいるほうが効きます - 黙っている子
出したくないものを抱えています。話しかける回数を減らします - 平気なふりをする子
いちばん見誤りやすい形です。触られたくないので、触らずにおきます - 言い訳をする子
「靴がすべった」など。自分を守っている最中なので、否定しません
泣いている子には、言葉を足さない
泣いている子に「悔しかったね」と言うのは、よく紹介される返しです。
ただ、実際の記録を見ると、そこから先が違いました。
さっきのマラソン大会のお母さんは、褒めてもケーキを出してもだめで、最後は抱っこして泣かせきったら落ち着いたそうです。
体育祭のリレーで転んでしまった子も、後になって効いたものとして「先輩が抱きしめてくれた」「みんなが名前を呼んでくれた」を挙げていました。
泣いている間は、言葉が届く時間ではないのかもしれません。
泣きやむまで、隣にいるだけで足ります!
平気なふりをしている子には、話しかけない
いちばん気をつけたいのが、明るく振る舞っている子です。
ここで「悔しかったね」と言ってしまうと、隠していたものを開けにいくことになります。
そのつもりがなくても、「本当は悔しいはずだ」と決めつけた形になってしまうんですね。
本当に気にしていない子もいます。
その場合、こちらの一言で初めて「あれは悔しいことだったのか」と教えることになってしまいます(T_T)
運動会の夜、寝る前に何を話す?
時間をずらすと言えることが増える
帰り道に言えなかったことは、その日の夜に回せます。
お風呂のあとや、布団に入ってからです。
厚生労働省の案内にも、助言や次の提案は、十分に話を聴いて本人が納得したあとにするとありました。
昼間は聴くだけにして、夜に一言だけ足す。
この順番なら、同じ内容でも届き方が変わります!
夜なら、たとえばこう言えます。
評価ではなく、見ていた事実だけを伝えます。
「すごい」も「頑張った」も付けないのがコツです!
付けた瞬間に評価に変わって、また跳ね返される可能性があるからです。
走り方の話をするなら、何日か空ける
「もっと速くなりたい!」と本人が言い出したときだけ、練習の話が使えます。
こちらから持ち出すなら、運動会の日は避けます。
その日は、負けた事実と直結してしまうからです。
何日か空けてからなら、同じ話でも「悔しかったからやる」に変わります。
比べる相手も、選べます。
隣の子ではなく、前の自分と比べます。
他の子と比べた自信は、もっと速い子が現れた瞬間に崩れてしまうからです。
これは東京学芸大学の先生も指摘していました。
運動会でリレーに選ばれなかったら?
ビリとは、悔しさの形が違う
リレーの選手に選ばれなかった日は、かけっこでビリだった日とは中身が違います。
練習したのに届かなかったという点と、人が決めたという点があるからです。
しかも、この悔しさは人前で出しにくいです。
選ばれた子の前で悔しがるわけにいかないので、家に帰ってから出てきます。
小学6年生で0.01秒差で補欠になった女の子は、帰宅後に大泣きして部屋に閉じこもったそうです。
言っていたのは「みんなにバカにされる」でした。
順位ではなく、周りからどう見られるかのほうが本人には大きかったんですね。
だから、返す言葉もそこに合わせます。
その子の全部が否定されたわけではない、と切り分けます。
選考は一日のタイムを切り取ったものにすぎないからです。
選ばれた側にも、しんどさはある
意外だったのが、選ばれた側の声でした。
幼稚園からずっとリレーのアンカーだった娘さんが「いやだったなぁ」と振り返っていた、という投稿があります。
「クラスからのプレッシャーがつらい…」と言っていた子もいました。
選ばれなかった=かわいそう、とも限らないようです!
それと、埋め合わせは別の場所で起きることがあります。
リレーの選考に落ちた子が、その運動会の仮装徒競走で1位になって喜んでいた、という話がありました。
走ることではなく、学校に来づらかった友達を毎日迎えに行っていたことが、運動会の日に他の保護者から伝わって分かった、という子もいます(^^)
運動会で親が言いがちなNGは?
言い換えのセットで持っておく
つい出てしまう言葉と、その言い換えです。
公認心理師の方が監修した記事にあった内容を、運動会の場面に置き換えました。
- 「気にしなくていいよ」::気持ちを否定する形になります。
→ 「うまくいかんかったら、へこむよね」 - 「次があるよ」::今日のことがまだ終わっていません。
→ 「今日はしんどかったね」 - 「◯◯くんは速かったね」::他の子と比べる形になります。
→ その子が自分で言うまで、他の子の話は出しません - 「いつも最後だもんね」::決めつけのラベルになります。
→ 今日一日のこととして話します
言い換えの共通点は、ひとつだけです!
その子が感じたことを、そのまま言葉にして返しているという点です。
元子どもたちが「嫌だった」と覚えている言葉
大人になった人たちが、運動会の思い出として挙げていた言葉があります。
ちゃんと努力したの?
辛いことも乗り越えなきゃ
運動会の記憶を振り返った投稿より
どちらも、言った側には励ましのつもりがあったはずです。
でも、覚えられているのは責められた記憶のほうでした。
おじいちゃんおばあちゃんの一言も出てきます。
「おっそいなー、足引っ張るなや!」と言われた、という回想もありました。
家族の誰かがこれを言いそうなときは、先に伝えておくと防げます!
ビリを気にしているのは誰?
親のほうが気にしていることがあります
ここは、書きにくいところですが、大事なところです。
小学2年生の息子さんがビリだったという相談に、こんな一文がありました。
両親とも1〜2番しかとったことなかったので、驚きました。本人はケロッとしていて、欲もない感じでした。
育児相談サイトの投稿より
この方は回答をもらったあと、「かけっこくらいでこだわっちゃダメよね」と書いていました。
自分の速かった記憶が、そのまま子どもへの期待になっていたんですね。
かけっこ2位で顔から転んだ息子さんの話もあります。
帰ってきたときは「ころんじゃった。くやしかった」と言っていたのに、夕方には「マイクラやるぞー!」と普通に遊び始めたそうです。
引きずっていたのは、お母さんのほうでした(T_T)
本人が気にしているのは、順位じゃないかもしれない
これがいちばん驚いた話です!
小学生が自分で書き込んだ相談に、こうありました。
運動会の徒競走見られるのがやだなんです 親とか友達とか先生とか。
小学生本人の相談投稿より
順位ではなく、見られることが先に来ていました。
他にも、スタートのピストルの音が苦手で耳を押さえていたから出遅れた、という1年生がいました。
この子に走り方を教えても、たぶん解決しません。
だから、話を聴く順番が先なんです!
何が嫌だったのかは、本人にしか分かりません。
生まれ月と体の大きさの話
もうひとつ、親が知っておくと少し落ち着ける話があります。
同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは体の大きさに差があります。
スポーツの分野では、上位に4月から6月生まれが偏るという傾向が報告されているそうです。
ただ、これは子どもに言う話ではありません。
言い訳として渡すと、本人がそこで止まってしまうからです。
同じ研究では、小学生のときにチャンピオンだった子のうち、中学の大会で入賞できたのはごく一部だった、という結果も出ていました。
今の速さは、今の速さでしかないということですね!
なお、極端に体の動きがぎこちない、という場合には、練習量の問題ではないこともあります。
その場合は相談できる窓口があるので、園や学校の先生に一度聞いてみる手もあります。
運動会で子どもが覚えているのは何?
大人になった人が覚えていたこと
最後に、いちばん伝えたい話です。
かけっこがずっとビリだった人たちが、大人になってから運動会を振り返った文章を集めてみました。
ビリでも母は笑顔で迎えてくれました。
運動会を振り返った投稿より
足が遅くて徒競走はいつもビリ。それでも、お弁当を作って見に来てくれる母の姿を見つけるととても嬉しかった。
運動会を振り返った投稿より
みんながゴールしてるのに最後まで応援してくれる事が嬉しかった。
運動会を振り返った投稿より
気づいたことがあります。
誰も、かけられた言葉を覚えていないんです。
覚えているのは、笑顔で迎えてくれたこと。
見に来てくれたこと。
最後まで見ていてくれたこと。
全部、言葉ではなく態度のほうでした。
やる気がなかったのに、お母さんの「頑張れー!」という声が聞こえて、残っている力を振り絞って走った、と書いている人もいました(^^)
その人が覚えているのも、言葉の中身ではなく、自分の名前が呼ばれたことのほうです。
運動会の日に、思い出したいこと
その日にかける言葉を、完璧に選ばなくて大丈夫です!
順番だけ覚えておけば足ります!
帰り道は、運動会の話をしません。
泣いているなら、泣きやむまで隣にいます。
平気なふりをしているなら、そのままにしておきます。
言いたいことは、夜まで待ちます。
走り方の話をするなら、何日か空けます。
そして、その子がいつか思い出すのは、たぶん言葉ではありません。
最後まで見ていたこと、名前を呼んだこと、帰ってきたときの顔のほうです。
今日うまく言えなかったとしても、見ていたことは伝わっています(^^)
